田中邦衛さんとの思い出

温泉のイメージ写真

こんばんは、増田です。

田中邦衛さんが亡くなられました。僕にとって、あまりにも悲しく、寂しいことです。僕は、大の北の国からファンで、好きすぎて、大学進学を北海道に選んでしまった程です。夏休みには、富良野プリンスホテルでアルバイトをしていました。北の国からの舞台の地で、アルバイトをしてみたかったんです。

衝撃の瞬間は突然やってきました!アルバイトを終え、深夜にホテルの大浴場に入っていると、一人の人が入ってきました。よく見ると、『田中邦衛』さんではありませんか!僕はあまりの驚きのあまり、大浴場で溺れそうになりました。。。深夜のため大浴場には、田中邦衛さんと僕二人っきり、というシュチュエーションです。溺れそうになった体を起こし、持ち前の図々しさを武器に、話しかけてみました。しかも、サウナに入ったところを追っかけていったので、袋小路に追い込んだ感じです。

「田中邦衛さんですよね、僕、北の国からの大ファンなんです、好きすぎて大学進学も北海道を選びました!」

二人っきりのサウナで、大声で挨拶しました。もちろん真っ裸です。

「そうか、それはお騒がせしました」

と、とても穏やかに返してくれました。そして、隣に座らせてくれて、お話もしてくれました。邦さんは、次回の北の国からの撮影で、プリンスホテルに滞在していました。サウナから出て、一緒に湯船に浸かり、また一緒にサウナに入ったり、夢か現実か分からない時間を過ごしました。そして、お風呂から上がり、邦さんから信じられない衝撃の一言が!

「明日も一緒に入るか?」「はい、お願いします!」「じゃ、一緒の時間で」

それから毎日、僕は大浴場の前で邦さんと待ち合わせをして、一緒にお風呂に入りました。廊下の向こうから僕を見つけ、思いっきり手を振ってきます。「悪い、悪い、お待たせ〜」とか言いながら、大浴場に入ります。毎日です。。。二人っきりの深夜デートです。。。そして、その日どんな撮影があったか、全部僕に喋るのです。。。毎日です。。。なので僕は、放送の一年以上前に、全てストーリーを知っていました。他にも大河ドラマの話など、本当にたくさんお話しをしてくれましたし、冗談も好きで、サウナで二人で、腹を抱えて笑ったり。。。とても可愛がっていたただきました。

アルバイト最終日の前日、「僕、明日でアルバイト終わりなんです」と伝えると、「そうか、寂しくなるなぁ。。。」と言っていただきました。さらに「最後一緒に写真撮ろう!」と邦さんの方から、僕がお願いしたいことを、先回りで言ってくれました。最終日もいつもと同じく、待ち合わせをして、それまでと同じようにご一緒させてもらえました。せっかくの記念の一枚だからと、わざわざフジテレビのプロカメラマンを呼んでいただきました。写真を撮り終え、ホテルの外まで出てきてくださり、

「お前はまだ若い、これからたくさん色々なことがある、しっかり頑張るように、いいかちゃんと頑張るんだぞ!」

と、僕の手を両手でギュウーーーーっと握ってくれました。僕はほぼ半ベソで「一生の思い出です」と言うと、

「毎日一緒にサウナに入って俺も楽しかったよ、ありがとう!」

と返してくれました。僕がオンボロの軽自動に乗り、ルームミラーで見ると、僕の車が見えなくなるまで、手を振ってくれました。僕は溢れる涙と共に、富良野を後にしました。

25年前の夏の出来事です。今思い返しても、本当に現実に起きたことなのか分からなくなりますが、忘れられない大切な思い出です。この話を人にすると「田中邦衛さんってどんな人?」と聞かれます。僕は必ず、「あのドラマの役柄そのまんまの人」と答えます。優しさと気遣い溢れる、素敵な方です。どこの馬の骨かも分からない、無礼極まりない小僧を、とても可愛がってくれました。御恩は一生忘れません。邦さんの訃報を聞いた時、手を振りながら近づいてくる姿、汗をかきながら一生懸命話をしてくれる姿、満面の笑顔、そしてあの手の温もりが、走馬灯のように駆け巡りました。僕は、邦さんと色々なことが起きても「頑張る」と約束をしました。その約束を守るため、今日も明日もキッチンに立ち続けます。

あの時あんなによくしてくださり、本当に本当にありがとうございました。心からご冥福をお祈り致します。