こんばんは、増田です。
実は…僕には…
毎年、6月になると思い出す
暗い過去があります。。。
来月のメニューに繋がる
エピソードなので、
少しお付き合いください。
このエピソードに繋がる話はこちら
をご覧ください
https://bonmasuda.net/2021/04/48827/
もう20年以上前の話ですが、
僕は、料理人を辞めたいと
真剣に思ったことがあります。
思い悩んでいました。
精神的にドン底の状態でした。
大学を卒業してから
料理の世界に入った僕は、
当然なんにも出来ませんでした。
僕は、料理がやりたかった訳でもなく、
ただ何となく働いていました。
現場で飛び交う専門用語も
ちんぷんかんぷんで、
言っていることさえ理解出来ない状態で、
全く戦力になっていませんでした。
それまで無駄な時間を
過ごしたような気がして、
大学に行ったことをとても後悔した程です。
こんな事なら早く料理の世界に
入っていればよかった。。。
そんな思いでした。
毎日、シェフや先輩から
罵声や暴力の嵐…
身も心もボロボロの状態でした…
もう辞めたい…
とにかくここから逃げたい…
心底そう思っていました。
まかないも喉を通らず、夜も眠れない…
もう朝なんか来るな、
と思っても、当たり前ですが、
必ず朝になり、仕事が始まる。
そして、また罵声、罵声…
全く楽しくありませんでした。
ある日、意を決して
シェフに、もう辞めたいですと、
言いに行きました。
シェフは黙って話を聞いてくださり、
明日、お前の誕生日だろ、
お祝いの料理を用意してある、
辞めるなら、その料理を食べてから辞めろ、
そう言われました。
僕は、あまりにも精神的に
追い詰められていたため、
自分の誕生日のことすら忘れていました。
次の日に、シェフが
誕生日のお祝いに作ってくれた料理が、
『ホロホロ鳥のコンフィ』でした。
これを食べたら辞められる、
そんな状態でした。
一刻も早く、この場から去りたい、
そう思っていました。
しかし、一口食べてその浅はかな思いが
すっ飛びました。
そのホロホロ鳥のコンフィが
あまりにも美味しくて…
美味しくて…
無我夢中で食べました!
気がつくと、骨までしゃぶっていました。
この料理、どうやって作るんですか?
我を忘れて、
シェフにそう質問していました。
お前、辞めるんじゃなかったのか?
え、あ、はい、えっと、
完全に動揺する僕に、
俺もお前と全く同じ道を歩んできた、
お前の気持ちは痛いほど分かる、
大丈夫だ、お前なら出来る、
大丈夫だ。
と、僕の手を握ってくれました。
僕は涙が止まりませんでした。
あの手の温もりと、
あの手の大きさは、
今でもはっきり覚えています。
そして、シェフからこう言われました。
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人生には二通りの生き方がある。
好きなことを
職業にする生き方が一つ。
もう一つは、
就いた職業を
好きになる生き方だ。
どちらも素敵な人生だが、
増田、お前は後者だ。
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この言葉は一生忘れません。
なんの目標も持たずに
生きていた自分にとって、
天から光がさしてきた気がしました。
これまで僕の支えになり、
これからも多くの希望を与えてくれる
言葉です。
その時に、
絶対にこの世界で生きていく、
絶対に逃げ出さない、
と心に深く深く刻みました。
シェフは僕の全てを
お見通しだったのだと思います。
20年以上前の話ですが、
今では人生の大切な宝物です。
どんな時代でも、
人と人との繋がりは尊いもので、
指導や教育は、
心と心が触れ合うことから成し得る、
と今は思えるようになりました。
そして、続けることで
見えてくる世界が必ずあります。
どんな職業にも必ずある筈です。
その景色こそが
人生の醍醐味だと思います。
僕はたまたま料理人になり、
周りの支えで続けることが出来、
今の景色を見ることが出来ました。
そこには必ず素敵な出会いがあり、
お互いの人生の深さが見えた時に、
感動するのだと思います。
これからも
僕は一期一会の出会いに感謝し、
料理を作り続けます。
毎年、自分の誕生日が近づくと
あの時の辛さを思い出します。
ほろ苦い思い出です。
あの時、ホロホロ鳥を食べなかったら、
料理人を辞めていたと思います。
来月、僕の誕生日月は、
このホロホロ鳥の料理を、
ボンマスダで出そうと思います。
今度は僕が作る番です。
僕の人生を変えた一皿を
是非ご賞味ください。
少し長くなってしまったので、
コースの詳細は
またお知らせします!
054-395-9655