あの日から7年

ディナー予約台帳

こんばんは、増田です。

今日は僕の想いを書きました。7年前の10月6日に、ボンマスダはオープン致しました。もちろんですが、自分のお店を持つのは初めてで、「夢が叶った」という達成感より、不安が心の中を支配していました。

  • 本当にお客様は来てくれるのだろうか。。。
  • 家賃は払えるのか、
  • スタッフにお給料は払えるのか。。。

頭の中は全く整理されていない状況での、オープン日でした。しかし、そんな思いはすっ飛びました。お店に入りきらない程の、お祝いのお花がどんどん届きました。お店の中だけでなく、お店の前も横も、お花でいっぱいになりました。あの嬉しかった想い、お花のいい匂いは、今でもはっきりと覚えています。連日「おめでと〜」と、たくさんのお客様に恵まれました。ボンマスダの船出は、最高のものになりました。

今思うと、順風満帆な日々でした。あのことが起きるまでは。。。


3年前、コロナが流行り始めました。

  • 営業してはダメ
  • お酒は出してはダメ
  • 人数制限しなさい
  • そもそも飲食店がコロナの温床なんだ

僕らは活躍の場を奪われました。コツコツと積み重ねてきたものが、崩れてしまいそうな感じがしました。あの時は、パニックという言葉がピッタリで、どうしていいのか、どうなってしまうのか、全く分かりませんでした。お店を守るため、スタッフを守るため、始めたテイクアウト。とにかくやるしかありませんでした。急にテイクアウトをやり出して、買ってくれる人なんているのか。。。そう思いながら、LINEとメルマガを流したら。。。数時間、電話が鳴り止みませんでした。一人目のお電話の方は、泣いていました。

「増田さん、絶対にお店を守ってね、何でも協力するから」

泣きながら何度もそう言われました。僕も涙が止まらなくなり、西澤さんに代わってもらいましたが、西澤さんも涙が止まらなくなっていました。こんなにもたくさん、応援をしてくれる人がいるのかと、実感した瞬間でした。


コロナ禍で試行錯誤を繰り返す中、2022年9月に起きた豪雨被害による断水。コロナの大打撃に、追い打ちをかけるように起きた断水は、心が折れそうになりました。店内でぼうぜんとする中、ある事が起きました。次から次へと、お客様がボンマスダに、お水を持って来てくれたのです。

「ここに持って来たら、困っている人に届けてくれると思ったから、増田さん後は任せた!」

店内は、お水のペットボトルと皆さんの想いで、いっぱいになりました。この時は目が覚めました。僕には、落ち込んでいる暇なんてなかったんです。朝から晩まで、皆さんからお預かりしたお水を配りました。


実を言うと、7年前、独立する時に、箱根に帰ろうとしていました。実家のある箱根の周辺で、お店を出そうと考えていたんです。それが僕の人生設計でした。しかし、その決断をすると、清水の方々にさよならを言わなければならない、その寂しさもとても感じていました。毎日、葛藤していました。そんなある日、人生を決める一言を言われました。子ども食堂に来ているお子さんに…

「ずっと子ども食堂に来たいから、ずっとやってね!」

…そう言われました。僕に抱きつきながら。

「もちろんだよ」

僕は、何の躊躇もせずに答えていました。その子に「箱根に帰るから、もう子ども食堂は出来ないよ」とは言えませんでした。そして、冷静に、その時の自分のことを考えてみたんです。毎月開催している料理教室に来て下さっている生徒さんから、「増田さん、来月は何のメニューやるの?」と必ず聞かれます。毎年、おせちを買って下さる方から、「増田さん、おせちの注文ね、一生するから」──そう言われています。僕は、子どもたちに、料理教室の生徒さんに、おせちを買ってくれる方に、僕についてきてくれたスタッフに、「さよなら」なんて言えない!

その時の、自分に関わってくれている方々の顔を思い浮かべたら。。。僕の腹は決まりました。コックになった頃、師匠から言われた言葉が鮮明に蘇りました。

「人生には二通りの生き方がある。一つは好きなことを職業にする。もう一つは就いた職業を好きになる。どちらも素敵な人生だが、増田、お前は後者だ」

この言葉で、モヤモヤした気持ちが、真っ青な青空のように晴れたのを覚えています。同じように、自分の好きな土地で生きる人生も素敵なことですが、住んだ土地を好きになる人生も、素敵なことだと思ったのです。さらに、住んだ土地に住む人たちを好きになることは、もっと素敵なことです。あっという間の7年ですが、僕にとっては宝物の7年間です。これを読んで下さっている全ての方にお会い出来て、本当に幸せです。僕には、子ども食堂に来る子どもたちがいます。いつも支えてくれる会員様がいます。この後ろ盾があれば、何があっても乗り越えられます!


あの日からもう7年です。僕は自信を持って言い切れます。

「あの時の決断は正しかった。本当に正しかった!」

料理人になって、清水に来て、清水でお店を出せて、本当によかったです。明日10月6日で、7周年を迎えることが出来ます。今、僕の目の前に、7年分の予約台帳があります。昔のアルバムを見るように台帳をめくると、「◯◯さんだ」「◯◯さんの名前もある」──お客様の一人一人の顔が浮かびます。7年分の台帳を、今日一日中ずっと見てました。見始めたら止まらないんです。そして自然と涙が出ます。多分、生きるって感動が詰まっています。だから、自然と涙が出ます。僕は、これだけ多くの方々に支えられてきた軌跡を、胸に深く刻みました。感謝の気持ちを、この文章内ではとても伝えきれません。本当に皆様方のおかげ様です。また7年間、共に汗を流した全ての仲間たちに、心から感謝します。

8年目がスタートしますが、より一層、子どもたちのために、応援してくれる方のために、前進あるのみです。チーム増田は、まだまだ至らない点がたくさんあります。厳しく、末長いご指導をいただけたら幸いです。会員様のご来店を、スタッフ一同、心から、お待ちしております。

追伸

「そう言えば、最近ボンマスダに行ってないなぁ」という方も、ぜひ久しぶりに僕に会いに来てください。お礼に7周年記念のマグネットを差し上げます^_^